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日々是味方

「見方を変えれば味方に変わる!」
日々の生活の何気ないことから学べることは沢山あります。
それは一見ちょっとしたことであっても自分自身のアンテナに引っかかるかどうかではないでしょうか?
 日々生活する中での気づきや思いについて、時に熱く語ります。

N部長に寄せて。


昔の上司、N部長が亡くなったと人づてに聞いた。

この状況なので身内だけで葬儀を済ませたらしい。

6年ほど前に彼女が定年退職を迎えると知り、

花を送ったお礼の電話をいただいたのが最後になってしまった。

 

もう30年近く前になると思う。

2回目の転職の面接で初めて彼女と出会った。

女性を積極的に雇用していた会社で、所属した部署も全員女性。

田舎の会社で“あの子”と名前を覚えてもらえなかったり、

言葉通りの社長のかばん持ちに嫌気がさしての転職だったので

やっと一人前に扱ってもらえると喜んだ。

 

ところがすぐ難関が待っていた。

N部長をはじめ、先輩女性陣とのコミュニケーションが難しい。

どう思われようが思ったことはハッキリ言う。

納得しない時は全く反応しないか、徹底的に反論する。

“笑顔”を戦略的に使う。

都会の人たちはこんなに個性が強いものなのか、と驚いた。

比べて私は意思が弱く、上手く愛想を振りまくことができない。

この差をどうやって埋めていけばいいのか、

周りの様子を伺いながらの言動・行動がさらに首を絞めた。

 

 

ある時、初めてのお客様から来てほしい、と電話を受けた。

迎えてくれた男性社長のお話しを聞いていると

突然「あのさ、男に代わって来てくれない?」とニヤリと笑った。

言われるまで何も失態をした覚えはない。

「かしこまりました、男性社員から連絡させますね」と無理やり笑顔をつくり

テーブルに広げた筆記用具を急いで鞄に突っ込み、外に出た。

後から思えば気色が悪く、結果オーライだったのだが

“私が女だから? 女だと仕事にならないから?”

と頭の中がグルグルして泣きながら会社に戻った。

 

涙をこらえながら事情を説明した私を

先輩たちは慰め、訪問先の社長の悪口を散々言ってくれた。

私なんかより先輩たちのほうがもっと多く体験している。

それに気づいて苦手意識しかなかった先輩たちとの距離が縮まった。

そして普通に当たり前に接してくれている殆どのお客様に

より感謝の気持ちが増すようになった。

 

この後、数回、同じような嫌なことはあった。

女だからと言われないようにときっちりやっても

認めてもらえない、どうすることもできない悲しさは

“仕方ない”としか片付けようがなかった。

 

そんなわけで私は働いてきた年上の女性に特に頭が下がる。

もう辞めてしまっていても、パートであっても、どんな職種でも。

(もちろん女性を受け入れてきた会社や男性にも、だが)

私が数えられる程度の嫌な思いで済み、

働くことに楽しさ・素晴らしさを感じることができたのは

先を行く人たちの活躍があってこそだと思っている。

 

会社の設立当初にプロパーで入ったN部長も

色んな体験をしたに違いないが、そういえば全く聞いた記憶がない。

聞いておけば良かった、と思う現在の私は

当時のN部長より年上になった。

 

(書き手 ジャスミン)