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日々是味方

「見方を変えれば味方に変わる!」
日々の生活の何気ないことから学べることは沢山あります。
それは一見ちょっとしたことであっても自分自身のアンテナに引っかかるかどうかではないでしょうか?
 日々生活する中での気づきや思いについて、時に熱く語ります。

涙がでる料理。


600ccの水に昆布10gを入れて、弱火で60℃まで上げる。

タイマーをセットして1時間60℃をキープ。

火を消して鍋に温度計を入れたままフタをし

時々確認して温度が下がっていたらまた弱火に。

 

1時間経ったら昆布を取り出し、85℃まで温度を上げ

17gのかつお節を入れて10秒数えて漉すと

黄金に輝いた出汁のできあがり。

 

塩2つまみ、薄口しょうゆ小さじ3を入れると

唸ってしまうくらいの素晴らしいお吸い物になる。

最初はそのまま全て飲み干してしまい

以降は倍の量をつくるようにしている。

NHKの「奇跡のレッスン」で

京都の料亭「菊乃井」の主人・村田さんが

福井県の調理課の高校生に教えていたレシピだ。

和食の素晴らしさを伝える番組だと思ったら

想像を遥かに超えた感動の2時間だった。

 

まずは生徒一人ひとりがつくった料理を味見。

やる気をだすような愛ある課題の伝え方に

こんな先生や先輩が身近にいたら最高だろうな、と

料理人というより人として興味が湧く。

 

「自分以外の人を喜ばせる、楽しませる。

だから料理をつくることは考えること」

 

「決まりなんかない。自由に楽しくやろう」

 

「出来た後にもう一度何か出来ることは無いか

と考えるのが進歩につながる」

 

「派手に目立つのではなく、離れてみると見えない細かなことを重ねて

一生残る料理なる」・・・などなど名言の連発。

それから「日本料理とは水の料理」と仰っていた。

煮る・蒸す・茹でるなど水があっての調理だから、らしい。

 

 

一週間のレッスンの最後は

“家族が食べて涙が出るような料理をつくること”

 

生徒がノートに書く親が好きな食材や料理は

洋食や中華系ばかりで和食離れを目の当りにする。

外国人を教えているときと同じ感じ、と仰って

“必ずお吸い物をつける”ようにと村田さんは条件を追加した。

最近食べたものを思い出してみたらお味噌汁くらい。

和食らしいものつくってないなぁ。

こうやって近い将来、和食は本当に世界遺産になってしまうのか・・・

 

村田さんは亡くなった師匠の弟さんのお店で

師匠と全く同じ味の煮物椀を口にして琴線に触れ

記憶が色々蘇り、涙してしまったそうだ。

皆もきっと家族の琴線に触れるものがつくれるだろう、

と思っての課題だと。

 

それを聞いて家族がとっても喜ぶものをつくる、

という単純な課題ではなさそうだと

多分画面越しの生徒たちも私も気づいた。

・・・でもどうやって?

 

 

ラストは招待した親御さんに生徒自ら料理を運び

両親や祖母が料理を口にする様子が映し出された。

多分感想を促されているのだが、

親御さんたちは涙でなかなか言葉にならない。

生徒たちは見事課題をクリアした。

 

「こんなことができるようになったんだ」

「成長したなぁ」

「味にはっきりとした意思を感じた」

「心配していたけどちゃんとやってるんだね」

やっと出た親御さんの言葉は

普段、子供を気にかけている気持ちが溢れていた。

でも子供が作ったことが嬉しいのは大前提として

ひと口食べて言葉に詰まるほどになる?

 

課題が出てからの数日間、

生徒は招待する家族は何が喜ぶのか観察したり

記憶を遡ったりしていたに違いない。

「料理をつくることは考えること」を実践し

料理を通して親御さんが感じ取った、ということか。

 

私が料理を好きな理由は調理や美味しさの体験だ。

ときは誰かに喜んでもらいたい場合もあるけど

それとプロ、料理人との違いは・・・

“本当に心が込められているかを追求すること”

ふと言葉が降りてきた。

 

(書き手 ジャスミン)